アラーノの良さを、前向きに、考える。

2020/07/14

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アラーノの良さは何なのか?

残念ながらネガティブな状況になると、どうしても監督の選手起用や選手のパフォーマンスに批判が出てきてしまいます。


いま鹿島アントラーズで最も批判を浴びてしまっている選手の1人がアラーノではないでしょうか。


アラーノは、2020シーズンの6試合全てに先発しており、直近の2試合ではFW・MFの選手で唯一フル出場しています。

アラーノの良さは何なのか?

次節の横浜M戦を楽しく観るために、あくまで前向きに、考えてみようと思います。

プロフィール

まずはアラーノのプロフィールをおさらいしてみたいと思います。

身長172cm、体重69kg。
1996年9月生まれ、23歳。ブラジル出身。

ブラジルのSCインテルナシオナルの下部組織で育ち、2017シーズンにトップチーム(当時2部)へ昇格、リーグ戦11試合に出場しています(全て途中出場、ゴール・アシストなし)。

SCインテルナシオナルは、1909年創立、2006年と2010年にリベルタドーレス杯優勝、2006年は決勝でバルセロナを破り、FIFAクラブW杯も優勝している名門です。
2017シーズンは史上初の降格となり、2部で戦うシーズンでした。

なお、鹿島アントラーズの公式サイトでもアラーノのコメント付きで紹介されている通り、この2017シーズンのSCインテルナシオナルの監督はザーゴでした。
しかし、ザーゴの在任期間はわずか半年程度で、アラーノのリーグデビューの前に解任されています。

2018シーズン、SCインテルナシオナルは1部へ昇格し、アラーノはリーグ戦9試合に出場します(先発2試合、ゴール・アシストなし)。

< 2018シーズン アラーノプレー動画 >
この動画を見る限り、パスが得意という印象を受けます。

2019シーズン、アラーノはブラジル2部のコリチーバFCへ1年間の期限付き移籍リーグ戦33試合に出場(先発29試合)、5ゴール・5アシストという結果を残し、チームを1部昇格へ導きました。

< 2019シーズン アラーノプレー動画 >
この動画を見る限り、ドリブルもキックも上手いという印象を受けます。

そして今シーズン、鹿島アントラーズに完全移籍で加入しました。

鹿島アントラーズでのスタッツ

アラーノの鹿島アントラーズでのスタッツを見ていきたいと思います。

以下で使用しているデータは、Jリーグ公式サイトに掲載されている、J1 第1節から第4節までのものです。比較として、攻撃的MFでアラーノに次いで出場時間が長い、和泉・土居・染野・遠藤のデータも載せています。

下表は、90分あたりの走行距離・スプリント回数のデータです(出場時間が90分に満たない遠藤も出場した72分までのデータを90分に換算しています)。

< 90分あたり走行距離・スプリント回数 >

アラーノは走行距離、スプリント回数とも対象メンバー内トップです。出場時間が短い方が単位あたりの値は大きくなると想定されますので、出場時間が最も長いアラーノの走行距離とスプリント回数は断トツの数字と言えるのではないでしょうか。

つづいて、同じく90分あたりのシュートやパスなどの各種データを見ていきたいと思います。

< 90分あたりシュート・パス等データ① >
※プレー数:トラップやパス、クリアなどのボールタッチアクション回数

90分あたりシュート・パス等データ② >

90分あたりシュート・パス等データ③ >
※チャンスクリエイト数:PA内へのスルーパス成功+PA内からのクロス成功+ラストパスの合計値

90分換算にすると出場時間が短い遠藤にこそおよびませんが(それだけ遠藤は短い時間で効果的なプレーをしているということですね)、アラーノはシュート・パス、またタックルやインターセプトといったディフェンス項目のプレー数も、和泉・土居・染野を上回っています

更に特筆すべきなのがチャンスクリエイト数です。

アラーノは1試合あたりのチャンスクリエイト数でリーグ11位にランクインしています(1試合平均2.3。上表では90分あたり換算にしています)。

アラーノの長所・良さ

スタッツ見ると、アラーノの長所として下記があげられるのではないでしょうか(スタッツにない、私の個人的な意見もありますがご容赦ください)。



運動量

チーム随一の走行距離・スプリント回数・プレー数を誇ります。



パス精度

リーグ11位のチャンスクリエイト数、チーム内上位のロングパス成功率を誇ります。



守備力・献身性

チーム内上位のタックル数・インターセプト数を誇ります。


また私の個人的な意見ですが、守備時の献身性も非常に高いと感じます。


例えば浦和戦では、和泉や染野が攻め上がった状態でカウンターを受けた際に、自陣ゴール前までカバーに入りディフェンスをするシーンが何度か見られました。



反応・切り替えの早さ

SNSなどでも多く見られる意見で、私も同意見です。アラーノはボールへの反応や攻守の切り替えがとても早いと感じます。


それだけ試合に集中している・先のプレーが読めているということでしょうか。


こうしたことが優れたスタッツのベースになっているのではないかと思います。



アジリティ

反応の早さだけでなく、単純な足の速さ身のこなしの速さも持っている選手だと感じます。


サッカーの試合で必要な短い距離を走る速さは、チーム内で上位に入るのではないでしょうか。



推進力のあるドリブル & プレースキック

鹿島ではまだそれほど良いシーンは見られていませんが、過去のプレー動画を見ると期待したくなります。


(個人的には川崎戦のオウンゴールは、ゴールを狙って蹴っており、アラーノのファインプレーではないかと思っています)


アラーノの短所とセルジーニョの存在

アラーノの長所は、スタッツを見たあとだと、簡単に挙げることができます。


一方で、アラーノのプレーに不満を抱いている人がいるのも事実。

(札幌戦と浦和戦を見ている時の私が完全にそうでした...)


アラーノのプレーに不満を抱いている人は、アラーノの下記のような短所が目についてしまっているのではないでしょうか?



シュート精度が低い

こればかりはチームが勝てていない以上、ゴールを決めないと批判は避けられませんね...


ただアラーノがかわいそうなのは、セルジーニョと比較されてしまうことでしょうか。


ここで、あらためてセルジーニョの成績を振り返ってみましょう。


下表①は、近年鹿島でプレーした主な攻撃的ポジションの外国籍選手のゴール数を示したものです(出典元:Wikipedia)。


< 表①:鹿島での公式戦ゴール数 >


Jリーグの外国籍選手最多得点記録保持者であり、鹿島でリーグ得点王も取っているマルキーニョスは別格ですが、セルジーニョは1試合あたりゴール数でマルキーニョスに次ぐ成績を残しています。


さらに、ダヴィはFWでのみプレーしていたこと、レアンドロとペドロ・ジュニオールは守備での貢献度が高いとは言えなかったことを考えると、FWだけでなくMFでもプレーし、守備でも貢献していた上で、点を取っていたセルジーニョは非常に稀有な存在だったのではないでしょうか。


下表②は、J1 2019シーズンの得点ランキング上位で、2シーズン以上J1に在籍している、他チームの外国籍選手3名のゴール数を示したものです(出典元:Wikipedia。ドウグラスのデータは中東から出戻り後の2018シーズン以降)


< 表②:2019シーズンまでの公式戦ゴール数 >


ここ2シーズンのドウグラスの成績には目を見張るものがありますが、セルジーニョの1試合あたりゴール数はFWでプレーしているディエゴ・オリヴェイラと遜色ありません。


やはりセルジーニョはJリーグ全体で見ても優秀な選手であったことが確認できます。


もちろんアラーノにもスペシャルなプレーを魅せて欲しいです。


しかし、セルジーニョは非常に稀有な存在であったことアラーノはセルジーニョより更に献身的なプレーができる選手であることは理解してあげた方が良い気がします。



トラップをミスする

ボールを持ってからの判断が遅い

データは見つけられませんでしたが、SNSなどで多く見られた意見で、私も試合を見ていて同じように感じました。


こうしたトラップや判断の問題を『アラーノが下手だから』で済ませてしまうのは簡単ですが、本当に下手な選手がこれだけのスタッツを残せるとは考えづらいので、私は期待も込めて2つの仮説をあげたいと思います。



仮説1:Jリーグの早さにまだ慣れていない

見つけられたのはこのエジガル・ジュニオ(横浜FM)のインビュー記事だけですが、外国籍選手からJリーグは常に試合の展開が早いといったコメントをよく聞く気がします。


(出典元:ザ・ヨコハマ・エクスプレス)


アラーノもJリーグの早さに慣れればもっと活躍してくれると期待したいと思います。


(注:エジガル・ジュニオがJリーグ加入後すぐ、16試合・11ゴールの成績を残したことは忘れましょう)



仮説2:間受けや後ろ向きでのプレーが苦手?

あくまで思いつきレベルの仮説と思って頂きたいのですが、過去のプレー動画を見ると、間受けからのプレーはほとんど見られず、アラーノのボールを持った時の良さは、キックもドリブルも、前向きでスペースがある時に出ているという印象を受けます。


(間受け:DFとDFの間、またはDFとMFのラインの間でパスを受けること。ボールをコントロールするスペースが狭く、攻撃する方向に対して後ろ向きでパスを受けなければいけないことが多い)


また、これまでの試合でも、相手に後ろから当たられるとファールをもらいにいって簡単に倒れてしまうシーン(結果ノーファール)が何度か見られました。

ひょっとしたらそれも後ろ向きでのプレーが苦手なことに起因しているのかもしれません。


もしアラーノが間受けや後ろ向きでのプレーが苦手な選手だとしたら、鹿島には土居や遠藤といった間受けを得意としている選手たちがいますので、チームとしてアラーノの良さが出るような使い方をしてあげる必要がありそうですね。



(お詫び:本当はこれまでのアラーノの使い方から、ザーゴの狙いを考えるところまでいきたかったのですが、そこまで辿りつけませんでした...ごめんなさい。今後の宿題とさせてください。


消化不良の方は、ロニーさんが『ザーゴがアラーノを起用し続ける理由』というタイトルですばらしい考察をされていますので、ぜひご覧になってみてください)


< ロニーさんの考察 動画 >


アラーノのプレーと、横浜M戦を、もっと楽しむ。

札幌戦と浦和戦を見終わった直後の私はアラーノのプレーに不満だらけでした。


いまでもチームが勝てていない以上、アラーノのプレーに満足はしていません。


しかしいまは、これでアラーノが点まで取れたらとんでもない選手になるなぁというワクワク感と、他の選手たちもアラーノぐらい走れ!もしくは走らないぶん点を取れ!というフェアな気持ちで、アラーノのプレー、横浜FM戦を楽しみにしています


この記事を読んでいただいた方が、同じような気持ちになっていただけていたらうれしいです。


読んでいただいてありがとうございました。

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